どっちもどっち 発端は女騎士の一言だった。 「貴方達って本当に仲が良くないのねえ」 「当然だ、なぜこんなコレラ菌にも匹敵する有害細菌と仲がよくなければならない?」 「うるせえ、こんな性格破滅型の黙示録的お子様なんかと仲良かったらそいつは間違いなく地獄の住人だ」 「誰がお子様だと?ガン細胞並に悪辣かつしぶとい御老人には言われたくないな」 「全生物的に言っててめえ以上にしぶとい生き物なんざ見たことないね」 「井の中の蛙という言葉を知っているか?」 「厚顔無恥って知ってっか?」 この際だから二人の第一印象を別々に聞いてみる事にした騎士たち。ノリの良い彼らは酒まで持ち出して迫る。 「あのデカブツの第一印象か。―――磔にされた英雄、だな」 「あのクソガキの第一印象?―――慟哭する獣か血を流す剱だな」 「へえ。」 「意外―。ムカついたーとかじゃないのか」 「まあ実際ムカついた訳だが。 「どっかに大怪我してんのにそれがどうしたって言わんばかりの、なんつーかな・・・雰囲気だった。 「どんな境遇に落ちようとそれを苦とも思わずに生きて、英雄になる奴の目だ。本人にそのつもりが無くとも、奴が自分を貫くだけで奴は英雄になる。真っ直ぐ前を見据えて、時々後ろを振り返って、落ち込んだり怒ったり悩んだり悲しんだり、実に人間らしく生きていく。 「自分の血にまみれてもやるべきことをやって、誇り高く生きてくんだ。 「結局のところ、奴は生まれながらの英雄だ。 「ようするにあいつは生き急いでるし死に急いでる。 「・・・喧嘩してるだけじゃなくてきちんと理解してるのね。」 「・・・・・そんだけ相手の事分かってりゃいいパートナーになれんじゃねえ?」 「パートナー? 「パートナーだぁ? 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「でもなあ」 「そうねえ」 「基本が正反対でも、あいつら行動はほとんど同じだよな」 「あれで気が合わないって言いはる方が無理があるわよね」 先日も、道端のチンピラをぶん殴っていたが、二人とも理由は 『掛け値なしの馬鹿だったから』 『本気でどうしようもない阿呆だったから』 ほとんど同じである。 この間殲滅させた盗賊団をターゲットにした理由は 『ここらで中規模の盗賊団で他の盗賊への警告になるし、人身売買やらを一番多くやっていた、付け加えるなら反吐が出る連中が多かった、ため抹殺決定とした』 『一番プライドが無くてタチの悪い奴らだったしな。一番武装が多いとこだってんでそこをまず押さえとくかって思ってよ』 似たり寄ったりである。 「貴様のような未知の細菌は小惑星にでもへばりついて燃え尽きるがいい。跡形も残さずに酸素が始末してくれる」 「月ができた時の隕石並に危険な奴が普通始末されるべきだろ先に。譲ってやるからさっさと逝ってこいや」 「慎ましく遠慮させて頂こう、俺は謙虚だからな。 「てめえに図々しいとか言われたくねえよクソガキ。 「どこまでも馬鹿だな貴様は。この俺に地獄の支配なんぞ似合うわけ無かろうが。どちらかといえば裏方がいい」 「なんでそこで支配になってんだよてめえはよ。なんでハデス倒すの前提なんだよ。しかも裏方がいいとかさりげなく希望いれてんじゃねえよ」 「希望もクソも無い貴様に言う権利は無い」 「希望もクソも無えだあ!?地獄を振り撒いて歩いてんだったらさっさと本場行ってこいつってんだよ俺は!俺の一番の希望はそれだ!」 「仲良いわよねぇ・・・」 「広く見ればな」 殺人級の攻撃の応酬を見ながら暢気に会話する騎士たちに、二人を止めるなどという自殺行為を行う者はいない。 「奴を嫌う理由? 「あいつを嫌う訳? 「サルみてえにちょこまかしやがっててめえはよ!」 「血筋で言えば貴様の方がサルに近いぞ北京原人。」 「・・・なんかさあ」 「ああ」 「どっちもどっちだよね」 「二人とも頑固だしな」 「むしろ頑固であるという一点のみが原因だよね」 「確かに」 日が暮れた頃ようやく帰ってきた二人は傷一つ無かったが、なぜか魔物の血に塗れていたりして一体どこで何をやってきたんだと王子は頭を抱えた。 |